損保代理店はどのように人材採用を行ってきたのでしょうか?
損保代理店の人材採用事情を理解するには、保険会社と保険代理店の密接な関係を理解する必要があります。
ある意味では、”タダ”で人材が供給されていたとも言える、損保代理店の人材採用事情をご説明いたします。
研修生制度による人材増加
まず、前提として、損害保険業界において生命保険業界のような直販は存在せず、保険代理店を介した販売のみが存在しています。
保険会社は、販売主体である損保代理店を増やすために、従来から研修生制度を採っていました。
研修生制度とは、保険会社が、将来的に損保代理店として独立したい人を研修生として雇い、研修を実施して育成し、独立を支援する制度です。
この制度は、20年ほど前は、「サラリーマンに向かない」「大企業に向かない」という人にとって、将来独立を目指す際の有望なキャリアパスでした。
保険会社に給料をもらいながら、研修を受け、独立の支援までしてもらえる「至れり尽くせり」の制度だからです。
保険会社は新卒・中途の研修生を採用し、研修を実施し、特に優秀だった人を保険代理店として独立させていました。
その中で、独立までいかなかった人は、既存の保険代理店に社員として割り振られました。
研修生制度によって、損害保険代理店業という成長産業に人材が供給されるエコシステムができあがっていたわけです。
これが、ある意味で、”タダ”で人材が供給される仕組みができあがっていたと言える理由です。
研修生制度の停止
しかし、この制度を継続したことで、あまりにも人が増えすぎました。
一方で、若者の車離れに伴う自動車保険の収入減少などにより、損害保険業界の成長も頭打ちになってきました。
そのため、今から10年ほど前、保険会社が研修生の採用をストップしました。
研修生の新規採用を実施しない空白期間が続き、損害保険代理店では若手人材が不足しています。
後継者の不足
また、損害保険代理店は高齢化が進んでおり、経営の中心は50代・60代になっています。
更に、研修生制度が停止していた期間があるため、次の世代を担う人材が不足しています。
一番、世代交代が上手くいっているのは、「息子に代理店を引き継いだ」というようなパターンです。
しかし、そのようなパターンでも、後継者は40代後半〜50代です。
こういった背景もあってか、損害保険代理店の集約化・大規模化が進んでいます。
損害保険代理店の手数料は大規模代理店ほど高くなるように設定されつつあることも、その傾向に拍車をかけています。
損害保険代理店の今後
損害保険分野に関しては、ネット損保も躍進しています。
また、自動運転が実現すれば、自動車保険の需要は少なくなることが予想されます。
損害保険代理店にとっては、事業環境は厳しくなっていくでしょう。
今後、損害保険代理店として勝ち残っていくためには、テクノロジーの活用も含めた新しい取り組みが必要になってくるでしょう。