ここでは、一般的な会社設立の手順についてご紹介します。
会社設立手順について、自分自身で会社を設立する方法と、専門家に会社設立を依頼する方法の大きく2つに分けてご説明します。
そして、最後に会社を設立する際に役立つTipsをご紹介します。
この記事の目次
会社設立手順(自分自身で行う場合)
会社設立に際して、会社の根幹になるような基本事項を決めていきましょう。
商号作成
まずは会社名を決めましょう。
3つの制約の下、自由に設定することができます。
1.使用できる文字が制限されている
- 漢字
- ひらがな/カタカナ
- アルファベット
- アラビア数字
- 一部の記号(中黒「・」、カンマ「,」、ピリオド「.」、ハイフン「-」、アンド「&」、アポストロフィー「’」)
2. 同じ登記住所で同一社名は作成できない
登記の住所が同じである場合、同じ社名を利用することはできません。
たとえば、シェアオフィスなどで同一名の会社が存在することはできません。
3.会社の一部を表すもの、また関係のない業界を連想させるものは使用できない
「◯◯支店」といった、会社の一部を表すようなワードは使えません。
また、金融業を営んでいないにもかかわらず、「◯◯金庫」といったワードを使うことができませんので、注意してください。
印鑑作成
会社設立をする際に、一般的に準備する印鑑は以下の4つです。
- 代表者印
-登記申請書に捺印するもの
-サイズは1辺が1cmより大きく3cm以内に収まるもの
- 銀行印
-法人口座の開設時に使用するもの
(代表者印でも代用が可能ですが代表者印は極めて大切なもので、できる限り使用頻度を少なくした方がいいため、多くの場合、使い分けます)
- 角印
-日常的に使うもの、社印とも呼ばれる
-請求書や発注書に押すときに使う
- ゴム印
-簡易的に捺印したい場合に使用するもの
-必ずしも持たなくても良いが、あると便利
役員報酬額の決定
原則として、役員報酬額は事業年度ごとに決める必要があります。
損金として扱うことができる役員報酬は3種類あります。
- 定期同額給与
-毎月一定額を支払うもの
- 事前確定届出給与
-あらかじめ税務署に届出を提出しなければならないもの
- 利益連動給与
-大企業にのみ認められている利益に応じて支払うもの
ここでは、会社設立するときのことを想定しているので、定期同額給与についてご紹介します。
定期同額給与は、会社設立から3ヶ月以内に決める必要があります。
そうしなければ、損金に算入することができなくなってしまうためです。 (定款で定めておくか、株主総会で決めてください)
また、給与額の変更は原則として期首の3ヶ月間のみなので、報酬額はその年の利益・費用を綿密に計算した上で、慎重に決定してください。
資本金額の決定
資本金額を決定しましょう。
資本金とは株式を発行することで集めた資金のことを指します。
つまり、資本金額は「会社の体力」を表すものです。
さて、資本金額を決める上で、重要なのが税対策です。
たとえば、資本金額が1,000万円未満であれば、消費税が設立1期目と2期目は控除されます。
また、1億円以下であれば、「中小企業」と判断され、法人税で優遇を受けることができます。
同様に、地方税についても金額による税率の違いがあるようです。
最後に考慮しなければならないのが業種です。
業種によっては資本金額の最低ラインが決まっている場合があります。
以上を参考に資本金額を決定してください。
話は逸れますが、、、 新会社法(平成18年施行)により、1円以上の資本金があれば、株式会社が設立できるようになりました。
ということは、安くてもいい!最悪1円でもいい!と考える人もいるかもしれません。
でも、考えてみてください。
さきほど、資本金額は「会社の体力」を指すものと述べました。
資本金額が1円の企業を「体力のある会社」と取引関係にある人々は考えるでしょうか。
おそらく取引相手から怪訝な目で見られてしまい、信頼を得ることは難しいように思います。
資本金額はこのように「会社の信用」でもあるのです。
定款作成
定款を作成しましょう。
定款とは会社の基本原則です。
記載項目は大きく3種類あります。
- 絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款を作成するにあたって必ず記載しなければならないものです。
以下の6項目がそれにあたります。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名または名称と住所
- 発行可能株式総数
- 相対的記載事項
相対的記載事項とは、定款を作成するにあたって特に記載しなくても問題ありませんが、定款で定めないと効力が認められないものです。つまり、定款で定めなければ拘束力を持たない事項のことを指します。
たとえば、金銭以外で出資をする場合、その旨を記載しなければ、金銭以外の出資をすることができません。
- 任意的記載事項
任意的記載事項とは、定款を作成するにあたって定款に載せなくても効力が認められるものです。つまり、定款に載せる必要はない事項のことです。
たとえば、株主総会の開催規定や役員報酬・配当金に関する事項などがそれに該当します。
▪️定款の認証について-電子認証の活用-
定款は作成後、記載事項が正しいものであるかどうかを第三者に証明してもらう必要があります。
会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する「公証役場」にて行います。
実は、定款は紙ベースだけでなく、PDFの電子定款で準備することも可能です。
電子定款を利用することで、定款の認証の際に必要な収入印紙代4万円を節約することができます。
ぜひ、ご活用ください。
資本金の払込
定款の認証が完了したら、次は資本金の払込です。
以下の手順に従って、行ってください。
- 資本金は“振り込む”必要があるため、発起人名義の口座に自分名義で振り込む
- 通帳の表紙、1ページ目、振り込みをしたページの計3ページ分のコピーを取る
- 払込証明書を作成する
- 作成した払込証明書を表紙にして通帳のコピーをホチキスで綴じ、各ページに代表印で契印をする
(契印・・・ページの境界に印鑑を押すこと)
登記書類の作成
登記書類の作成をします。
設立する会社の種類によって、書類も変わるので、下記リストの中から自分の会社のタイプに合わせて準備しましょう。
- 発起人決議書
- 発起人会議事録
- 代表取締役選定書
- 取締役就任承諾書
- 監査役就任承諾書
- 印鑑届書
また、下記リンクにて、各申請書の様式・記載例が掲載されているので、ぜひ参考にしてください。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#anchor1-1
尚、登記書類は製本が必要です。
印鑑証明書以外のすべての書類を重ねて、左側をホチキスで留めましょう。
サイズはA4で統一してください。
詳細はfreeeの「設立登記書類の綴じ方ガイド」をご覧ください。
会社設立登記申請
資本金払込後、2週間以内に法務局へ登記申請をします。
法務局内での指示に従って、手続きを進めてください。
ここでは登記申請におけるワンポイントアドバイスを3つほどご紹介します。
- 収入印紙の購入は法務局で行う
登記申請には収入印紙が必要になります。
申請前に事前に郵便局で購入することが可能ですが、法務局で書類を確認してもらってから貼ることがオススメです。
収入印紙は15万円と非常に高額で、書類の不備により収入印紙を無駄にしてしまっては大きな痛手となってしまうからです。
- 会社設立日について
登記申請書類を提出した日が会社設立日となります。
登記申請に手続きが完了した日ではありません。
日程を間違えないようにご注意ください。
また、登記申請は郵送でも可能です。
その場合、書類が法務局に到着した日が会社設立日となります。
会社設立日にこだわりたい方は、郵送する際に郵便局の窓口で手数料30円を支払えば、配達日を指定することが可能です。
- 法務局の業務取扱時間に注意
法務局の業務取扱時間には気をつけてください。
法務局の業務取扱時間は 平日8:30—17:15となっており、土日、祝日、年末年始は業務の取扱をしていません。
そのため、法務局に行くことができる日にあわせてこれまでの工程を進める、または法務局には行かず、郵送で登記申請をするなど、計画をしっかりと立てましょう。
登記後、各方面に提出が必要な書類
登記申請が完了したら、次は以下の機関に届出の提出が必要です。
届出の提出漏れを防ぎましょう。
1.税務署
- 法人設立届出書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 青色申告の承認申請書
- 厳選所得税の納金の特例の承認に関する申請書
2.都道府県税事務所・市区町村役場
- 定款の写し
- 登記事項証明書 (法人設立届出書と同じ内容のもの)
3.労働基準監督署
- 労働保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
4.ハローワーク
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届
5.年金事務所(社会保険の加入手続きをするため)
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者届
会社設立方法(自分自身で行わない場合)
ここまでが、自分自身で会社設立業務を行うステップです。
しかしながら、会社設立業務は必ずしも自分自身で行う必要はありません。
以下で2種類の方法をご説明します。
会社設立における手続き依頼先
会社を設立する際、あまりに多くのことを学ぶ必要があるため、パンク寸前になる方は少なくないと思います。
大半の方は知人や身内の士業の方に頼んでいるのではないでしょうか。
会社設立に関連する代表的な士業は以下の3つです。
それぞれが専門とする領域や依頼に際しての報酬相場が異なる点も要チェックです。
- 税理士
依頼領域:税関連業務(税務、決算)
報酬相場:およそ5万円
- 司法書士
依頼領域:登記業務
報酬相場:およそ10〜15万円
- 行政書士
依頼領域:行政関連業務(行政書類作成、認可申請)
報酬相場:およそ10万円
Q.誰に依頼するのが一番いいのか?
A.税理士の方に依頼する方が多いような肌感覚はありますが、必ずしも全員にとってベストな選択肢ではありません。 そのときの状況次第でベストな相談相手となる専門家が異なってくるのと同じです。 税関連業務が得意なメンバーがいれば、税周りの専門家よりも他の業務(たとえば、登記業務や行政関連業務など)に強い専門家に依頼した方がスピーディーに設立準備が進む可能性があります。 それぞれに専門領域があるということは、裏を返せば「専門でない領域は不得意である可能性がある」ということです。
そのため、まずは自身の状況を整理し、その上で依頼することをオススメします。
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Tips:会社設立する際に利用できる助成金/補助金
会社を設立するにあたり、懸念事項の一つに「お金」が挙げられます。
「自己資本をたくさん用意しなければならない」
「融資を受けるのもいいが、返済の目処が立たないと。。」などと悩み、起業を躊躇われる方もいるかと思います。
そこで、ご紹介したいのが「助成金・補助金」です。
「助成金・補助金」とは、国や地方自治体などの公的団体や民間団体からの資金援助のことです。 そして、最大のメリットは返済が不要であるということです。
主催団体はおもに5つに分類することができます。
- 公的団体
- 経済産業省
- 厚生労働省
- 地方自治体
- 民間団体
- 民間企業
- 公益団体
団体によって、目的・対象企業・対象事業内容が異なりますので、ご利用の際はご注意ください。
ここで、厚生労働省が主催している「事業主の方のための雇用関係助成金」についてご紹介させていただきます。 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/
雇用に関連すること(雇用維持、新規雇用、雇用環境の整備等)で多くの助成金について掲載されています。
ぜひ、ご覧ください。
最後に、そもそも会社設立にはどんな費用が発生するのか、またどれくらいの期間を準備期間として想定し資金を用意しなければならないのか、気になっている方が多くいらっしゃることと思います。
そちらに関しては、「保険代理店を開業するのに必要な資金」をご参照ください。
具体的なイメージが湧きやすくなると思います。